革のこと

クラッチモーターとサーボモーター

革のこと

さて、このブログでも何度かでてきている「クラッチモーター」と「サーボモーター」。工業用ミシンには主にこのどちらかが取り付けられていると思います。今後もブログの中で出てくる予定なので、ここで簡単に二つの違いについて説明したいと思います。

クラッチモーター

スイッチを入れると

クラッチモーターはスイッチを入れるとモーターが動き出します。「ブゥーン」という大きな音をたてて動き出し、スイッチを切るまではずっと動いた状態です。このモーターが動いている状態で、ミシンのペダルを踏むことでクラッチが繋がってミシンが動くようになっています。

ペダルを踏むと

ペダルを踏んだ分だけモーターの回転数が上がるわけではありません。ペダルを踏む強さによって、すでにぐるぐる回っているモーターの動力の伝わり具合を調整するのです。

ペダルを強く踏めば、ミシンベルトを回す回転軸がモータの回転軸にがっしりとつなぎ合わされ、速いスピードでミシンが動きます。逆に軽く踏めば、ミシンベルトを回す軸とモーターの回転軸はがっしりと組み合わず、こすれるような感じで合わさるので伝わる力は逃げ、ミシンの動くスピードもゆっくりとしたものになります。

こういう動力の伝わり方なので、スピードを繊細に一定でキープするような動きは非常に難しいですが、動かすところと止まるところのメリハリを効かせた操作をするには都合の良い構造になっていますが、そのコントロールは慣れるまでかなり難しく感じます。

MTで操作する自動車のクラッチと同じですね。自動車の場合は停車した状態でクラッチを急激につなぐと、車体の重さに負けて動かすことができずにエンストしてしまいますが、ミシンではそういうことはなく、急激に速いスピードでミシンが動き出します。

補足:ミシンの場合は逆でペダルを踏んでいくとクラッチがつながりますが、自動車は逆でペダルを放していくとクラッチがつながります。

構造はいたってシンプル

複雑に制御するこうぞうになっていないので、故障も少ないと思います。今までいろんなところでミシンを使ってきましたが、クラッチモーターが壊れたという場面に遭遇したことはないです。

サーボモーター

スイッチを入れると

スイッチを入れてもモーターは動き出しません。動かないようにコンピューターで制御されています。この、コンピューターで制御されていることが、サーボモーターの特徴です。

調べたらこんなものがあったので引用です

サーボ(Servo) の語源はラテン語の”servus”(奴隷)から由来しており、「主人の指示通り、忠実にすばやく仕事をする召使い」という意味があります。サーボを簡単に説明すると、指示した位置や速度にすばやく追従させる制御をおこなう装置といえます。高速に繰り返し指定した位置に移動することを得意としており、その特性から、高速で高性能な様々な工場の設備や自動機械に適用されています。たとえば、半導体や液晶パネルを製造する製造装置のほとんどに使用されています。

引用:YASKAWA 安川電機 サーボとは?

わかりやすいですね。まさにこの通りで、ミシンのサーボモーターもこのように制御されています。クラッチモーターとは違い待機中のモーター音がないので静かです。

動作の仕方を設定する

サーボモーターを使うにあたってまず大事になるのが、制御の仕方を設定することです。

設定する主な内容は、最小スピードと最大スピード、ペダルを放した時に停止する針の位置です。これを事前に設定しておき、ペダルの踏み具合がコンピューターを通じてモーターを制御します。この設定の仕方は機種やメーカーによって違うようです。例えば当工房で最近載せ替えたサーボモーターだとこんな感じでの設定でした。

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ペダルを踏むと

ペダルを踏むとミシンが動き出します。サーボモーターの機種にもよりますが、ペダルの踏み込みの強さによって設定された範囲内のスピードで暫次的にコントロールできたり、三段階にきっちり分かれたスピードでコントロールできたりします。

最大スピードもあらかじめ設定して制限できるのでミシンのスピードコントロールが容易です。そのため初心者でも扱いやすく、ミスも少ないでしょうが、ダイレクトにコントロールしている感じがしないので物足りなく感じるかもしれません。

どちらがいいのか

価格

もし購入しようと考えた場合、基本的にはクラッチモーターの方が圧倒的に安いです。しかし、探すと安価でサーボモーターを販売しているショップもあるかもしれません。実際僕は非常に安い価格でサーボモーターを手に入れることができました。しかし、それが不具合がないか自分のミシンに合うのかは事前にわからないことが多いので、リスクを承知で手に入れることになります。

機能

機能的にはサーボモーターの方が良いでしょう。パワーで劣るとされてきたサーボモーターですが、最近はパワーのある機種も登場しているようです。

耐久性

これはクラッチモーターの方が間違いなく故障が少なく、長期間にわたって使用することができるでしょう。サーボモーターは精密な電子部品を使用しているため、長く使用しているとどうしても故障が出てくるようです。

終わりに、オススメポイント

どちらのモーターがいいかは一概に言えませんが、もし中古でミシンを購入するのであるならば、クラッチモーターのものを選んだ方が不具合が起きにくいと思います。

私が購入した中古のサーボモーターが載ったミシンは、うちに来て半年も経たないうちに故障してしまいました。

ただ、サーボモーターの方がコントロールしやすいのは確かです。もしいち早くミシンをうまく扱えるようになりたいのであるならば、新品のサーボモーターの載ったもの、もしくは新品に準ずるくらいのサーボモーターが載っているミシンを購入した方が、間違いがありません。